"Merlin Atmos: Live Performances 2013”
Van der Graaf Generator
さて、皆さん、もうお聴きになられたでしょうか。2013年の欧州ツアーから採録されたライブ・アルバム「マーリン・アトモス」。CDは1枚ものとボーナス・ディスク付きの2枚組スペシャル・エディションの2種類があります。また、ヴァイナル(Vynil)つまりLPレコードも同時に発売されています。
私は最初に届いたのがLPだったので、まずそこから聴き始めました。
<LP (Vynil)版>
Side 1:
1. Flight
Side 2:
1. A Plague Of Lighthouse Keepers
プログレ・アルバムと見まがうばかりの片面1曲という構成です。このライブ・アルバム全体の中で、核となる2曲なのだということが極端なまでに強調されているのがこのLPというフォーマットで発表された形なのだと思いました。CDに入っているほかの曲との組み合わせで2枚組にすることもできたはずですが、そこを敢えてこの2曲だけに絞ったところにバンドの意思を感じないわけにはいきません。
それほどまでにこの2曲の存在感は大きいのです。もちろん、大本をたどれば、ともに古い楽曲で、「フライト」は1980年「A Black Box」で、「燈台守」は1971年「Pawn Hearts」での発表です。
「フライト」はVdGGの楽曲ではなく、ソロ作品として発表されK-Groupでのライブで数多く演奏されています。2012年の北米ツアーで初めてVdGGとしてのライブ演奏がお披露目され、日本でも同年8月の来日公演で一度だけ演奏されていますが、このライブ・アルバムに収録された2013年のバージョンはさらに進んだ演奏になっていることが聴き取れます。
一方「燈台守の憂鬱」(「燈台守の災厄」とか「燈台守の不運」とも訳すことができる)は、プログレファンの間でも名盤の呼び声が高い1971年のアルバム「Pawn Hearts」の目玉ともいえる楽曲ですが、実際に当時のバンドがこれを通常のライブで演奏したことはないということでも知られています。ベルギーのテレビ番組で放送されたスタジオ・ライブは中間部で分断して、2度に分けて収録されたものだったそうですが、それほどライブで演奏するには複雑かつ難しい楽曲だと言えます。先の「フライト」のライブ演奏で自信がついたためこの楽曲に取り組んだのだとピーターは書いていますが、デヴィッド・ジャクソンのいない(ついでに言うならスタジオ版でのロバート・フリップのエレキギターも抜いた)トリオ編成でのアレンジは、かなり難しかったのではないでしょうか。しかし、このライブ・アルバムで聴ける演奏は、そんなことを微塵も感じさせません。圧倒的な存在感を持って迫ってきます。
2曲とも、イタリアのミラノ公演から採られている旨がクレジットされています。ミックスダウンはヒュー・バントンが担当しており、何とも低音が深い、ライブ的な音に仕上がっています。小音量ではその辺りのバランスが崩れてしまいかねませんから、出来るだけ大きな音量で聴かれることをお勧めします。これは、CDでも同じです。
<CD 通常版/特別版のディスク1>
1. Flight
2. Lifetime
3. All That Before
4. Bunsho
5. A Plague of Lighthouse-keepers
6. Gog
1枚もので十分という人は、やはり全曲ヒュー・バントンのミックスダウンによるこの通常版で、実際のツアー中のセットリストに近いものを体験できます。そしてこの曲目を見てふと思ったのですが、ここに並んでいるのは、2つの大作を除くと、トリオになってからの楽曲が3曲と、ソロ・アルバムからの楽曲が1曲(「ゴッグ」)ということになっています。バンドの「現在進行形」であることを強調しているかのようなトラックリストだとも言えるのではないでしょうか。実際、ツアーの中でもかなりの回数演奏された楽曲がこれら4曲なのですし。
こうやって聴いてみて、改めて気が付いたのは「ライフタイム」がスタジオ版の印象よりもはるかにハードな楽曲であること。「オール・ザット・ビフォー」がなんとなく「レミングス」を思い起こさせること、「文章」がほんとにへヴィな楽曲であることなどです。やはりVdGGの真骨頂はライブにあり、ということを実感させられます。
<Bonus Disc in Special Edition>
1. Interference Patterns
2. Over the Hill
3. Your Time starts Now
4. Scorched Earth
5. Meurglys III, the Songwriter's Guild
6. Man-erg
7. Childlike Faith in Childhood's End
一方、ピーター・ハミルによる「編集とリバランス」が施されたボーナス・ディスクですが、こちらはミックスダウンと呼べるほどの作業はしていない、と理解されます。おそらくはツアー・クルーのエド・クラークがその都度録音したコンソールからのライブ・ミックスのステレオ録音にピーターが少々手を入れたのではないかと想像しています。もちろんご本人に確認したわけではないので、あくまで私の勝手な想像です。そのためか、ディスク1とは音の感触が若干異なります。そのため、2枚を続けて聴く、というよりは、それぞれを別のアルバムとして聴く方がより雰囲気に浸れるかもしれません。
選ばれた楽曲は、やはりツアー中、複数回演奏されたものばかりで、これらをディスク1と合せるとほぼツアーの全貌が分かります。ツアーで演奏されたのにこのライブ・アルバムに収録されなかった楽曲は「Mr Sands」ただ1曲のみ、という恐ろしい事実。CDの物理的な収録時間の制約を考えた場合のやむを得ない選択だったのかもしれませんが、実に惜しい。
それにしても、もう一度日本で見たい!と渇望させるには十分すぎるライブ・アルバムです。
という訳で、最後に2013年の欧州ツアーのセットリストを復習しておきましょう。
<Van der Graaf Generator European Tour 2013>
16th June 2013, Divadlo Archa, Prague, Czech Republic
1. Over the Hill
2. Flight
3. Lifetime
4. All That Before
5. Bunsho
6. A Plague of Lighthouse Keepers
7. Man-Erg
Encore:
8. Interference Patterns
17th June 2013, Columbia Club, Berlin, Germany
1. Your Time Starts Now
2. Scorched Earth
3. Flight
4. Bunsho
5. Lifetime
6. Gog
7. A Plague of Lighthouse-keepers
Encore:
8. Childlike Faith in Childhood's End
19th June 2013, Fabrik, Hamburg, Germany
1. Interference Patterns
2. Your Time Starts Now
3. Flight
4. Bunsho
5. Meuglys III, the Songwriter's Guild
6. A Plague of Lighthouse-Keepers
7. Man-Erg
Encore:
8. All That Before
20th June 2013, Centralstation, Darmstadt, Germany
1. Over the Hill
2. Flight
3. Bunsho
4. Lifetime
5. Meurglys III, the Songwriter's Guild
6. A Plague of Lighthouse Keepers
Encore:
7. Scorched Earth
21st June 2013, Gewerkschaftshaus, Erfurt, Germany
1. Interference Patterns
2. Your Time Starts Now
3. Mr Sands
4. Flight
5. Lifetime
6. All That Before
7. Bunsho
8. A Plague of Lighthouse Keepers
9. Childlike faith in Childhood's End
22nd June 2013, Tante Ju, Dresden, Germany
1. Over The Hill
2. Flight
3. Bunsho
4. Lifetime
5. All That Before
6. Meurglys III, the Songwriter's Guild
7. A Plague of Lighthouse Keepers
Encore
8. Man-Erg
24th June 2013, Melkweg, Amsterdam, Netherlands
1. Interference Patterns
2. Your Time Starts Now
3. Mr. Sands
4. Flight
5. Bunsho
6. Lifetime
7. Childlike Faith in Childhood's End
8. A Plague of Lighthouse Keepers
Encore:
9. Gog
26th June 2013, The Robin, Bilston, United Kingdom
1. Over the Hill
2. Flight
3. Lifetime
4. All That Before
5. Bunsho
6. A Plague of Lighthouse-Keepers
7. Man-Erg.
Encore;
8. Scorched Earth
27th June 2013, ABC, Glasgow, United Kingdom
1. Over The Hill
2. Mr Sands
3. Flight
4. Bunsho
5. Lifetime
6. Childlike Faith in Childhood's End
7. A Plague of Lighthouse Keepers
Encore
8. Gog
28th June 2013, RNCM, Manchester, United Kingdom
1. Your time Starts Now
2. Scorched Earth
3. Flight
4. Bunsho
5. Lifetime
6. Meurglys III, the Songwriter's Guild
7. A Plague of Lighthouse-Keepers
Encore
8. Gog
30th June 2013, Barbican, London, United Kingdom
1. Over The Hill
2. Flight
3. Lifetime
4. All That Before
5. Bunsho
6. Man-Erg
7. A Plague of Lighthouse-Keepers
Encore
8. Childlike Faith in Childhood's End
2nd July 2013, Udine Jazz 2013, Udine, Italy
1. Interference Patterns
2. Your Time Starts Now
3. Flight
4. Bunsho
5. Lifetime
6. Meurglys III, the Songwriter's Guild
7. A Plague of Lighthouse-Keepers
Encore:
8. Man-Erg
3rd July 2013, Teatro di Villa Clerici, Milano, Italy
1. Over the Hill
2. Flight
3. Lifetime
4. All That Before
5. Your Time Starts Now
6. Scorched Earth
7. A Plague of Lighthouse-Keepers
Encore
8. Gog
5th July 2013, Pistoia Blues Festival, Pistoia, Italy
1. Interference patterns
2. Flight
3. Bunsho
4. Lifetime
5. A Plague of Lighthouse-Keepers
6. Childlike Faith in Childhood's End
みなさん、欧州ツアーの追体験は出来ましたでしょうか。
By BLOG Master 宮崎