"Die Loesung" Amon Duul(UK) |
1. Big Wheel (5:09)2. Urban Indian (5:30)
3. Adrenalin Rush (5:21)
4. Visions of Fire (5:59)
5. Drawn to the Flame pt. 1 (8:07)
6. They Call it Home (4:40)
7. Die Loesung (3:36)
8. Drawn to the Flame pt. 2 (7:34)(CD Bonus Track)
member
- John Weinzierl / guitar
- Dave Anderson / bass
- Guy Evans / drums
- Julie Wareing / vocals
- Robert Calvert / vocals
- Ed Wynne / guitar
- Joie Hinton / synthesizers
さて、いよいよ、パワー・トリオ版VdGGのツアーが目前に迫ってきましたが、その「パワー」を支えるドラムス担当のガイ・エヴァンスについてもう1枚だけ紹介しておきましょう。
80年代後半のガイの活動で特異なものとしてこのアモン・デュール(UK)を挙げておきたい。アルバム上のクレジットがバンドの中心であったデイヴ・アンダーソン(ホーク)とジョン・ヴァインツィエル(ペンギン)以外、ほとんどのアルバムでされていない、という特殊な事情で実際にどのアルバムにガイが参加していたのかが明確ではないのだが、唯一例外なのがこの作品だ(タイトルはウムラウト付の"o"なのだが、便宜的に英語表記の慣習に従った"oe"表記にしている)。このアルバムだけは上記のメンバーがクレジットされており、二人のオズリック・テンタクルズとともにガイの名前が目を引いている。また、アルバム・ジャケットにはバンド名の下に大きくホークウインドのロバート・カルバートの名前がゲストとして書いてあるがメイン・ボーカルとして素晴らしいだみ声を聞かせてくれている。
デイヴ・アンダーソンはそもそもアモン・デュール2の「Yeti」までの正式メンバーとして活動をしていたわけだが、その頃にバンドに加入していたことのあるジョン・ヴァインツィエルとともに1981年にアルバム「Hawk meets Penguin」を引っさげてイギリスで「アモン・デュール(2)」としてデビューしている。そのため通常は本家ドイツのバンドと区別するためにアモン・デュール(UK)と呼ばれることも多いようだ。また、デイヴ・アンダーソンはアモン・デュール2を脱退した後、70年代後半はホークウインドのメンバーとして活動している。その縁でのロバート・カルバートの参加だと見ていいだろう。そのアモン・デュール(UK)はアルバムを5枚ほど残しているようだ。
1. Hawk Meets Penguin (1981)
2. Meetings With Menmachines, Unremarkable Heroes Of The Past (1984)
3. Airs On A Shoe String (Compilation, 1987)
4. Die Losung (1989)
5. Fool Moon (1989)
見ての通り1987年の段階で一度ベスト盤を出している。そのことから推測できるのは、80年代中期に一度は活動が停滞していたのではないか、ということ。そして、その後、復帰作として今回取り上げた「die Losing」(本当は「o」の上にはウムラウトが付いている)を製作したのではないかということだ。一般的な説によれば、続く「Fool Moon」はクレジットがないものの「die Losing」とほぼ同じメンバーで録音されたと言われている。つまり、「Fool Moon」にもガイが参加している可能性が高いということになるが、残念ながらまだ入手できていない。しかも、どうやらジャケットにはクレジットがないらしいので裏づけが取れていない、というのがこれまでに分かった情報。入手できたらご報告します。
では、本作に話を戻そう。「Hawk meets Penguin」ではデイヴとジョンによるインプロビゼーションを中心としたクラウトロック的な音楽が展開されているのだが、その後よりロック的な音楽性へと変化していったようで、本作ではむしろガンガンのギター・サウンドで力強いベースのリフと癖のあるボーカルが特徴的だ。また、オズテンから参加している二人の参加しているであろう曲では特にキーボードは完全にオズテン任せなこともあり、スペイシーなサウンドを控えめに響かせている。そして全体を通じて屋台骨を支えるのがガイのドラムスという訳だ。
アルバム前半(旧A面)で聴けるのはよりストレートでロックな音楽だ。クリアーだがヘヴィなギター・サウンドに重たくも疾走感のあるベース。岡井大二を思わせるボーカル。重たいながらもシャープで切れのあるドラムス。こういったものが絶妙に組み合わせられているのだ。曲の構成そのものは比較的単純で、その分一つ一つのリフやフレーズが覚えやすい。
アルバム後半(旧B面)は「Drawn to the Flame」という長尺曲のパート1と2に挟まれる格好になっている。パート1は、ドラマチックなコード展開に女声バッキング・ボーカルやコズミックなシンセなどプログレ的な曲想を持っているドラマチックな曲だ。その後の2曲はヘヴィでサイケデリックな楽曲だ。この2曲で女性ボーカルとなるが、これがまた80年代後半とは思えないヒッピー的な歌声で面白い。シンプルなフレーズを繰り返すギターもインド的な音階を使い繰り返しの効果を存分に用いた瞑想的な雰囲気を上手くつむぎだしている。そして、最後は、CDのみのボーナス・トラックとして収録されている「Drawn to the Flame」のパート2、たしかにアルバムに収録されているものは「パート1」となっているのでおかしくはないのだが、どう聴いてもアルバム収録のバージョンに到る途中の段階でのアレンジのように聴こえる。このアルバム・バージョンとこのバージョンの二つをともに録音し、気に入った方を収録した、ということかもしれない。CDのパッケージはLP以上の情報が何もないデジパック仕様なので、このボーナス・トラックについては何一つ分からないのだが、同じ局のアレンジ違い、というように聴こえる。面白いのは曲の最後の部分。パート1ではシンプルなドラムスにキーボードがアドリブを重ねていくところでフェードアウトしているのだが、パート2では、ドラムスもキーボードもともに暴れて曲が終わる。フェードアウトなし。ということでガイを目当てに聴くのであれば、このパート2は嬉しいボーナス・トラックだ。ほんの少しではあるけれど。
by BLOG Master 宮崎

