"The Storm (Before The Calm)" <Peter Hammill> |
1. Nadir's Big Chance
2. Golden Promises
3. Perfect Date
4. Spirit
5. Sitting Targets
6. Tapeworm
7. Nobody's Business
8. Crying Wolf
9. You Hit Me Where I Live
10. My Experience
11. Breakthrough
12. Skin
13. Energy Vampires
14. Porton Down
15. Birthday Special
16. Lost & Found
17. Central Hotel
さてもう一枚のコンピレーションは、逆にラウドで荒々しい楽曲を集めたものということになっている。やはり同様にピーター自身による解説が付いており、それによればこちらは「少しばかり騒々しい側のキャラクター」なのだそうだ。しかし、これは決して「過剰に増幅されたスリー・コードでのおふざけの歴史を意図したものではない」のである。もう一枚と同様にこちらもランダムに演奏されるに任せるのがよしとされている。「とにかく、ワン・ツー・スリー・フォー…」だ。「『ザ・カーム』は私の性質のより躁病的でない側面を見せている」と解説も相補的に同じ文章をもじっている。
こちらに入っているアルバム未収録楽曲は「ユー・ヒット・ミー・ホエア・アイ・リブ」であるが、これについては、すでにアルバム「スキン」のアメリカ盤などのボーナス・トラックとして耳にした方も多いだろう。英国ではこの曲は7インチ・シングル「ペインテッド・バイ・ナンバーズ」のB面としてのリリースであったため、ここに収められたのであろう。「スキン」のレコーディング後1週間ほどで録音されている。ここで聴けるキーボードのアルペジオはシーケンサーではなくピーターの手弾きだそうだ。
ここに収録された楽曲は「ネイディア」から3曲、「シッティング・ターゲッツ」から4曲、「スキン」から3曲、と結構固まっているのが特徴かもしれない。当然ながら「ネイディア」からVdGG後期3部作、VdGを経てKグループへと至る過程を思い浮かべれば、おのずとこれらの選曲にたどり着こうというものだろう。「スキン」はKグループ解散後すぐのアルバムであるが、楽器や音色の選び方やアレンジの方向性は異なるとはいえ楽曲そのものの根っこはまだ延長線上にあるものも多かったのは事実である。
これら2枚が発表されたこの時期のソロ・アルバムは「ファイヤシップス」(1991)と「ザ・ノイズ」(1992)である。これらはともにブックレットの最後に「Number One in the BeCalm series」「Number One in the A Loud series」と、それぞれ記してあり、これらを合わせてみたときに、当時のピーターが、作品を大きく二つの方向性に分類して発表する、ということを意図していたのではないか、という疑問が出てくる。おそらくは、これらのソロ作品2枚の発表において気に入っていたアイディアであったのだろうし、そのアイディアを過去作品からのコンピレーションという形でも試してみたかったのではないだろうか。そして、これらのキーワード「カーム」「ストーム」(あるいは「ラウド」)は、その後の作品では見かけることがない。それぞれのシリーズのナンバー2と銘打たれた作品ももちろんない。一時の気まぐれだったのだろうか。
いずれにせよ、これら2枚のコンピレーションは合わせて一枚と考える方がいい、両方を聴いた後にどちらか一枚だけを愛聴するようになってしまっても、それは聴き手の自由だろう。
by BLOG Master 宮崎