"GPB", "Now & Then", and "The Masters" by JBE |
"Gentlemen Prefer Blues" (1986) Jackson, Banton, Evans
1. Saigon Roulette (DJ)
2. Gentlemen Prefer Blues (DJ/HB/GE)
3. Tropic of Conversation (DJ)
4. The Main Slide (GE)
5. Foggy Foggy Dew (Trad. arr.DJ)
6. Spooks (DJ)
7. Half World (DJ)
8. The Epilogue (HB)
これは、1984年10月から1985年9月にかけてイギリスのFoelスタジオで録音されたものである。基本的な録音の目的は、このスタジオに残されていた未完成のマテリアルを最後まで仕上げる、というものであったとクレジットには記述されている。この未完成のマテリアルというのは、彼ら3人の最初の『ザ・ロング・ハロー』のことである。しかし、この最初の意図から残ったのは「The Epilogue」1曲だけで、あとはすべて新しく録音されたとあるので、やはり古いアウトテイク楽曲は新たにするには問題が多かったのかもしれない。しかしながら、その製作スタイルや楽曲の持つ雰囲気を考えるとこのアルバムは『ザ・ロング・ハロー Vol.5』と言ってもおかしくないだろう。「The Epilogue」にしても、オリジナルは1977年にヒューがイアン・ゴム(g,eng)、エリック・ケアンズ(ds)の二人と録音したものに1985年の時点でデヴィッド、ガイとヒューの3人で録音を重ねたものであるのである。また、2曲目の「Gentlemen Prefer Blues」は1976年以来この3人で演奏をした最初の楽曲だそうだ。これはたまたまガイがちゃっかり録音をしておいたものらしい。
楽曲のほとんどはデヴィッド・ジャクソンのペンになるものであることがLH1との共通の雰囲気を持っていることの最大の要因であろう。これは1982年のLH3でも確認できることだが、ピーターを除く3人のうちでもっともVdGG的な音楽を書くのはデヴィッド・ジャクソンである。そのためインスト曲であっても、そこはかとなく漂うVdGG色は、あえてオルガンを排した曲が多く、どちらかといえばクラシック的な音作り、ベースとなるのがブルース的なコード進行、またヒューのレゲエ趣味を反映したリズムであっても、デヴィッドの吹くサックスやフルートによって明白である。VdGGとはあえて違う方向性を出そうと分厚い音を極力排したことで、頭の固いファンには受け入れ難い面も多分に持ってはいるが、このトラッドやクラシック、ブルースやジャズに根ざした音楽性を理解することでVdGGの音楽に対しての楽しみ方に奥行きがさらに増すことは間違いないことだろう。いや、もちろん、ピーターの歌がないとだめだぁ、という人に無理に勧めはしないが。正直な話LH1よりはよりリラックスした作りであり、ジャム・セッション的なアルバムであることは間違いないので、LH1でもだめな人にはもっとだめだろう。彼らのベースにある音楽性をもっと深く知りたいというファン向けのアルバムかもしれない。
オリジナルはフランスのデミ・モンドが出したLP(DMLP1011)であるが、どうやらCD(DMCD 1011)にもなっているらしい。また、上記楽曲のうち2曲「Foggy Foggy Dew」「Half World」を『タイム・ヴォルツ』から「The Liquidator」「Tarzan」に入れ替えただけのCD『Now & Then』というものがその後出回っている。これは『タイム・ヴォルツ』のCDを出しているThunderBoltというレーベルだが、ライセンスをデミ・モンドから受けている。なぜ2曲が差し替えられたかは不明。ピーターの歌が入っている方が売れると判断されたのかもしれない。こちらもLPがオリジナルであったための時間的な制約が2曲を追加ではなく入れ替えという形にした理由かもしれない。しかもアルバムにはVan der Graaf Generator - Jackson/Banton/Evansと記載されているため誤解を招きやすい。
『ジェントルメン・プリファー・ブルース』からの楽曲は8曲中6曲が収録されているわけだが、残念なことに曲順は微妙に入れ替わっている。2曲を入れ替えたからなのかどうかは分からない。
"Now and Then" (198?) Van der Graaf Generator - Jackson/Banton/Evans
1. Saigon Roulette
2. The Liquidator
3. Gentlemen Prefer Blues
4. The Main Slide
5. Tropic of Conversation
6. Spooks
7. Tarzan
8. The Epilogue
さらに時代を下って1998年にはVan der Graaf Generator名義でもっと訳の分からない形でのCDが発売されている。これも『ナウ&ゼン』と同様二つのアルバムからのごちゃ混ぜであるが、入手はもっともしやすい状態だ。ここでは『ジェントルメン・プリファー・ブルース』からは8曲中A面トップの3曲しか収録されていない。『タイム・ヴォルツ』から10曲中7曲を収録だが曲順は無残にも変えられている。『GPB』からの3曲にしても単純にA面の1曲目から3曲目までを持ってきただけで、きちんと曲を選べよ、という感じだ。
"The Masters" (1998) Van der Graaf Generator
1. Saigon Roulette
2. Gentlemen Prefer Blues
3. Tropic of Conversation
4. Tarzan
5. Rift Valley
6. Liquidator
7. Coil Night
8. Roncevaux
9. It All Went Red
10. Faint and Forsaken
いずれにせよ、『タイム・ヴォルツ』と『ジェントルメン・プリファー・ブルース』を持っていれば他は買う必要のないものだ。『GPB』が入手できない場合は『ナウ&ゼン』が次善の選択肢だろう。両方とも持っていない場合は『ザ・マスターズ』で代用するしかないが、どちらもオリジナルの形とは異なるということは踏まえておいていただきたい。
by BLOG Master 宮崎