Big Buddha ガイ・エヴァンス参加作品 |
さて、その間に、この夏のVdGG公演に向けて久しぶりにコンタクトを取ったEcho Cityのメンバーであるポール・シアスミスさんから、もう一人のメンバーであるジャイルズ・ペリングさんに紹介していただいて「Eruption Day」を入手できたわけですが、そのことがきっかけで、エコー・シティのメンバーの過去に興味を抱き、知られざるガイ・エバンス参加作品がまだまだあるのではないか、と調査を開始しています。
最初にご紹介するのは、現在のエコーシティのメンバーのひとりであるロブ・ミルズさんのバンド「ビッグ・ブッダ」です。というのも、ガイのソロ・アルバムである「ザ・ロング・ハロー Vol.4」のCD版(Voiceprint)に付加されたボーナス・トラックの中の「ケアテイカーズ・ワイフ」のライブ演奏がこのバンドだったためです。調べてみるとこのバンド、ビッグ・ブッダ(大仏)名義のセット・テープのみで、2つのアルバムを制作、発表していました。「TLHv4」のボーナス・トラックはそのうちの1本から採録されています。
これらは、カセットだけのリリースだったので半ばあきらめながらインターネット上を探し回った結果1ヵ所だけこれらのカセットを両方とも在庫でもっているところが見つかりました。そこは、なんと、オイディプス・レコーズ。そうです。「ステレオ・ソニック・スマック」という冊子(デビューから1980年代後半までのピーターのソロ・コンサートの演奏曲目を網羅した資料集)を作ったのがフレッド・トムセットという人物が経営しているショップです(彼は他にもクリス・ジャッジ・スミスの最初の2枚のアルバム「デモクレイジー」と「ドーム・オブ・ディスカバリー」を制作し発売した人物としても知られています)。ともかく、早速コンタクトを取って、ビッグ・ブッダの2本のカセット・アルバムを購入したのでした。
"Buddhology-Revelations From Under The Encounter" (Big Buddha)
(Van Hire Records VH184 Cassette, UK、1992)

Side-A
1. An Unnamed Accident Of Love
2. Time Tribe
3. River Crossing Incident
4. Did You Know That Frank?
5. Typewriter Eyes
Side-B
1. Open Channel D
2. In The Dumb Box
3. Keebab Time
4. The Robot
5. Caretaker's Wife
*Written-By Rob Mills (tracks: A1 to B4), Guy Evans (tracks: B5)
Members;
- Bass Gus Garside
- Drums Guy Evans
- Saxophone Karen Boswall, Rob Mills
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"The Dogford Chronicles" (Big Buddha)
(Van Hire Records VH184 Cassette, UK、1992)

Side-A
1. The Sore Feet And Aching Lungs Of The Long Distance Runner
2. Pranksters Mole
3. Whale Shark Pup
4. Hollies Down And Charlie
5. Paddys Dream
6. Mopti
Side-B
1. Blue Beret
2. Blood In The Lift
3. Clint-The Song With No Name
4. The Sacred Cowbells
5. An Answer To The Nu Nubility
*Written-By Rob Mills (tracks: A1 to A5, B1 to B5)
Don Cherry (tracks: A6)
members;
- Bass Gus Garside
- Drums Guy Evans
- Saxophone Karen Boswall, Rob Mills
Featuring Kimberley Lawson (tracks: B3)
ご覧の通り、ガイ作曲は2作を通じて1曲のみ。基本的にはこのバンドはサックスのロブ・ミルズさんのリーダー・バンドだったのではないかと思われます。ドン・チェリーの曲もあまり違和感はありません。
レーベル番号が2作とも同じであること、録音場所も同じ、発表も同じ年であることなどから、独立したタイトルが付けられてはいるものの、この2作品は二つで一つのアルバムと見てよいのではないでしょうか。録音場所はロンドンのEcho City, Charteris Community Centre, The Trolly Stop and Tenor Clefとなっており、謝辞がインレイ上とは別に、カセットのレーベル面にHelen, Tony, Giles, Paul and Claireに対して述べられています。GilesとPaulはもしかするとエコーシティの二人のことかもしれませんが確認はできていません。
メンバーの表記を見て判るように、サックス2本にベースとドラムスという変則的な編成です。
ロブ・ミルズさんはこのバンド以前の活動はよく分かりませんが、エコー・シティ以外の活動については、現在もこのビッグ・ブッダをメンバーを替えて継続しています(ドラムスはいません。詳しくは、Big Buddhaのマイスペースページを参照)。ほかにも、グラフィック・アーティストを含めた即興演奏のグループ Tale of What! (improvisation from graphic scores、映像)や、GNO Quintet (jazz), H2C3 (electro-acoustic), デュオやソロで演奏活動を続けているようです。CDもこれらのフォーマットでそれぞれ出していて、ドラムレスになってからのビッグ・ブッダのアルバムも出ています。詳しくは、Rob Millsホームページを見てみてください。
ベースのガス・ガーサイドさん(Facebookページ、またはMySpaceページを参照)についてはその後フリー・ジャズのミュージシャンとして、また、イギリスのボランティア団体「Mencap」のNational Arts Development Manager として活躍されているようです。近年のライブ映像などをYouTubeで見ることが可能です。また、Big Buddhaを挟んでARC名義のトリオでのレコーディングやライブも行っており、そちらはアルバム2枚が出ています。これも即興演奏のグループのようです。フリージャズのグループ「ARC」(ダブル・ベース、チェロ、ヴァイオリンによるトリオ)は間が空いていますが、2枚のアルバムを出しています。
"Out Of Amber" (1993)
"The Pursuit Of Happiness" (2009)
活動歴が分かっているのは今の所この二人だけなのですが、どなたかもう一人のサックス奏者カレン・ボズウォルさんについて何かご存知でしたらコメントしていただけると嬉しいです。
肝心の音楽ですが、最初の印象は「タイトでアヴァンギャルドなビッグ・バンド」でした。全体を通してスイング感があり、アンサンブル重視に聞こえるところもあり、一方で不協和音を取り込んだサックスのラインが絡み合ったり、ヘンリー・カウかピッキオ・ダル・ポッツォか、と思わせる現代音楽的な展開を織り込んで見せたりしています。でも共通しているのはスイング感。これはちょっと今まで聞いたことがない類のジャズだと感じました。まさに、VdGGのファミリー・ツリー図を掲載しているサイトVan der Graaf generationにおけるガイ・エヴァンスのページにあるビッグ・ブッダの説明「世界で最も小さいビッグ・バンド」というのは的を射ています。
録音は1992年。ピーターとのユニオン・チャペル・コンサートより後になりますから、すでにガイとはエコー・シティの活動を共にしていたかもしれません。これだけの量の音源があり、かつ、カセットではヒスノイズがありますが、「TLHv4」に収録された「ケアテイカーズ・ワイフ」を聴く限り、上質の録音をしているようなので、何とかCD化してもらいたいところです。
●ご参考
Rob Millsマイスペース(最近の作品の試聴が出来ます)
Rob Millsデュオ演奏の映像
Gus Garsideさんの 映像もありました。
Arc - Sylvia Hallett, Gus Garside, Danny Kingshill
エレクトロニクスを操るDan Powellとのデュオ演奏
もう一本。
Ron Caines / Gus Garside / Andy Pyne / Dan Spicer at Brighton Poetry Festival
by BLOG Master 宮崎

