ヒュー・バントン 新作ソロ・アルバム「HBプレイズ・バッハ・オンHB3」 |
さて、ソファ・サウンドの更新の中でもピーターが触れていましたが、ヒュー・バントンの久しぶりの新作ソロ・アルバムが発売になりました。
今のところ、クラウド・ファンディングのサイトである「バンド・キャンプ」からのダウンロード販売のみのようです。
*「Band Camp」は、アーティストが自分で作品を販売できるようにと立ち上げられたアメリカのサイトとのこと。買い手はアーティストの提示する最低金額以上の金額であれば、いくらで買うのも自由。サイト運営会社への手数料以外はすべてアーティストへと行くらしいので、自分で販売するよりも手軽でコストもかからないため多くのアーティストが利用しているようだ。詳しくはサイトの説明、または、wikipediaで。
“Hugh Banton Plays Johann Sebastian Bach on HB3 organ”
(HughBanton 2019 Jan. 14)
1. Toccata & Fugue in D minor BWV565(9’47”)
2. Wachet Auf – chorale(1’24”)
3. Wachet Auf, ruft uns die Stimme (Awake, the voice is calling us) BWV645(4’32”)
4. Passacaglia in C minor BWV582(13’05”)
5. Dasalte Jahr – chorale(1’20”)
6. Dasalte Jahr vergangen ist (The old year is passing) BWV614(3’04”)
7. Gigue Fugue BWV577(3’31”)
8. Fantasia in G major BWV572(8’46”)
バンドキャンプ(Bandcamp)でのヒュー・バントンのページ
ダウンロードには、3ページに渡りヒュー自身によって書かれた、今回使用したオルガン「HB3」の紹介、1曲ごとの楽曲の解説とバッハの紹介、さらにヒュー自身の来歴が簡単に述べられています。楽曲ごとの解説は、そのライナーノーツに任せて、ここでは、そこに書かれていないことを軸に書いておきます。
また、バンドキャンプのページには、ヒューが開設しているオルガン・ワークショップ・コムのHB3のページのリンクが紹介されているのですが、1月21日現在、そのページはまだ存在していませんでした。という訳で、直接ヒューに尋ねてみました。すると、その返事はすぐに来て、
"The Organ Workshop page will happen very soon, this week I hope. It provides some technical information."
ということで、出来れば今週中に公開するつもりでいるようです。そこにはHB3について、より技術的な事柄も紹介するとのこと。ですので、ここでは技術的なことにはあまり触れていません。
※ 追記(2019/Jan./26):オルガン・ワークショップのホームページに、「HB3 Generator」と題されたページが追加されました。
また、ヒューによると、ライナーにもあるように2017年2月からHB3の製作を始めたとのことですが、彼にとってそれは、コンピュータ・ソフトウェアのプログラミングに本格的に取り組む初めての挑戦だったそうです。彼の言葉を借りれば「ノービス(novice)」つまり「初心者」だったと。ヒューは、そのため、Flowstoneという自分が利用するプログラミング・ソフトを出しているDSP RoboticsというメーカーのFlowstoneユーザー・フォーラムを最大限に活用したようです。そこで、世界中のFlowstoneユーザーの意見やアドバイスを参考にしながら、開発を行ったとのこと。そのフォーラムでは、何人かの良い友人も得られたと言っていました。
ヒューが、どの程度までオルガン・ワークショップのページに書くのかわかりませんが、こういう背景があったのだ、ということを知っておくのも新作を聴くにあたって、とても参考になると思います。
というのも、今回の新作では、HB3しか使っていないということで、その音源は、完全にソフトで生成したものであり、サンプリング音源も使っていなければ、本物のオルガンで録音した部分も一切ない、ということなのです。したがって、普通に想像できるようなサンプリング・キーボードのような音とはかけ離れたものになっていると言えます。一方で、本物の教会のパイプ・オルガンを録音するときにつきものの、協会独特のエコーというかリバーブなどは一切なく、ヒューが自身で慎重に付加した残響効果が、とても効果的に響きを豊かにしています。その結果、本物ではありえないほどに一つ一つの音がクリアに聞こえており、ある種衝撃的ですらあります。
その辺の感想をヒューに伝えたところ、彼自身、今回のアルバムを作った後では、以前の2作品「ゴルトベルク変奏曲」(やはりバッハですね)と「惑星」(ホルスト)の音は、今、HB3の音と並べてみると、色褪せて聞こえるかもしれないと心配していました。もしかすると、将来、HB3で録音しなおすこともあるのかもしれない…、と、含みを持たせた発言をしているのですが、ところが、驚いたことに、ヒューは、「しかし、まずは、すでに次のアルバムの作業に取り掛かっているんだ。」と書いてきました。そして…「…望むらくは、今度は、9年よりも早く出したいんだけどね!!」と。ヒュー自身、そうは言いながら、
“and let people know there is more in the 'pipe-line' soon.”
と、すぐにでも出せるようになるだろうということを皆さんに知らせてほしいと言ってきており、それなりに早い時期に出てくることが期待できそうです。出来るかもしれません。いや、きっと早い、と信じてます。
ライナーノーツには、3枚の写真が載せられており、まずは、HB3を走らせているPCと、演奏を録音するためのPCが並んでいる写真がトップに来ています。つぎに、2016年6月に撮影したというバッハの銅像とその前でポーズを決めているヒューのご満悦そうな写真。そして最後はバッハが38歳の時に協会の音楽指導者と市の音楽監督に就任したドイツのライプツィヒにあるトーマス教会の写真です。
ダウンロードに含まれているジャケットの画像は、相変わらず(「惑星」のオルガンワークショップにあるダウンロード・バージョンと同様に、という意味で)そっけないもので、おそらくトーマス教会ではないかと思われる協会の外観写真です。全2作同様、Fie!からもCDとして販売してくれるといいのですが、今のところその辺の話はされていないようです。どうなるかは不明です。
by BLOGMaster 宮崎