VdGG 日本公演を振り返って 最終夜 |
at Astro Hall, Harajuku, Tokyo. 30th Jun. 2008 (Mon.)
1. Interference Patterns
2. (In the) Black Room
3. Scorched Earth
4. Lifetime
5. All That Before
6. Meurglys III, The Songwriters Guild
7. Over the Hill
8. (We are) Not Her
9. Childlike Faith in the Childhood's End
(encore)
10. Nutter Alert
今日の「Interference Patterns」は初日、二日目にもましてスリリングだった。はらはらさせてくれる。全くこの三人はたいしたもんだ。もはや何も言うことはない。ひたすら音楽に身を任せよう。
2曲目に持ってきたのは再び「(In the) Black Room」だ。これも何とも豪放というか、すさまじい演奏だ。私のお気に入りはピーターが「Thunder!」と歌い、ガイが低いタムで雷の音を模したような音を出すところ。なんともすごい曲だ。「雷神」。まさにガイのことを指している言葉だと思う。
そして、初日に素晴らしい演奏を見せてくれた「Scorched Earth」。今日の演奏はよりラフでもありしなやかでもある。今回も「アンダーカヴァー・マン」とのメドレーではなかったが、とても感動させられた。言葉では、すでに何と言って良いのか分からなくなってしまっている。
次にきたのは『トライセクター』から「Lifetime」。何度聴いても感動的だ。特に胸を打つのは「What if I told you...,」のくだり。とても素晴らしい。そしてこの曲順はずっと変わらなかった「All That Before」に続く。ここでもピーターのギターがうなるうなる。この2曲は昨年2007年の演奏から、アルバムの録音を経て、さらには4月のツアーを経て、どんどん素晴らしいものへと進化している。まさにバンドが生き物であり、まさに今進化の真っ最中であることを証明している曲だ。
六曲目は、長い曲「Meurglys III, The Songwriters Guild」(ギターの名前の発音は、「マーグリス」と「モーグリス」の中間みたいな音だ)。初日でむちゃくちゃハードでヘヴィな演奏を見せてくれたこの曲をもう一度最後に聴けるというのは嬉しかった。一箇所だけ、ブレイクを曲が終わったと勘違いした興奮したファンが拍手をしてしまったのが残念と言えば残念だが、それはそれで興奮の仕方がものすごかったことを示しているとも言えるだろう。それほどすごい演奏だったのだ。むしろ共感してしまった。拍手をしたかった気持ちはよく分かる。バンドもこういうことを逆に喜ぶだけの懐の深さを持ちあわせている。
再び静かなイントロから始まる「Over the Hill」では、ピーターとヒュータイミングが微妙に合わないところをガイがこうだ、こうだ、と言わんばかりに交互に二人を見ながら叩いていたのがとても印象的だった。やはりこのバンドはガイが真ん中でつないでいるのだ。強固なトライアングル。3人が密接に繋がり合い、触発しあってこそ、あの音楽が生まれるのだということが今回のライブを見ていてもっとも強烈に印象に残ったことだ。曲を書いているのがピーターだから、歌っているのがピーターだから、バンドはピーターの「バックバンド」だ、などということを言う人もいるが、それは全くの的外れだし、そういうことを言う人たちは、きっと彼らの音楽をきちんと聴けてもいないのだろう。話がそれてしまった。
そして、この流れも一貫していた「(We are) Not Her」へと続く。ここでもガイのリズムを要として二人が迫力のある演奏を繰り広げていく。絡み合い、支えあい、ぶつかり合う。終わった瞬間にものすごい拍手だった。
ピーターが、ピアノから離れ、再びギターに持ち替えた。何をやるのだろう。何と三度「Childlike Faith in the Childhood's End」だ。しかも、なんと、出だしの一音の音色のセレクトをヒューが間違えたのだ! 本来ウッドウインド風のオルガン音色のはずが、ひずんだオルガンの音が出てしまったのだ。すかさず修正。ピーターもヒューもそ知らぬ顔で演奏を続けた。しかし、これ以外ではミスが全くなかった。ピーターのギターが前の2回とも間違えていた中間部の、ギターが最も目立つリードを取る部分も完璧だ。この日の演奏は今回の公演中でも最高だったのではないだろうか。体が震えた。もはやどんな言葉にもならない程の感動。
...そして終了。やはりスタンディング・オベーション。始める前にピーターが「最後の曲だ」と言っていたにもかかわらず、まだ次の曲があると思っているかのように、あるいは、あまりの感動に腰が抜けたような状態になってしまい立てずにいる人もいた。やがて全員が立ち上がり、さらに大きな拍手と歓声が会場を包み込んだ。そして三人はステージを去った。
もちろん、アンコール。誰もがもう一度。もう一曲、と手拍子を取り続け、やがて三人が戻ってきた。ピーターがピアノに座り、叫んだ。「Nutter Alert」だ。これもまたラフでワイルドだったが、勢いと力ずくで強引にまとめていったようにも聞えたが、その強引さが曲のパワーを一層際立たせ、神々をも恐れさせる音楽、すなわちゴッドブラフな音楽を導き出していた。
曲が終わると再びスタンディング・オベーション。後方から女性がステージへと駆け寄り、メンバー一人ひとりに花束を渡した。その花束を持って三人はステージから去っていった。こうしてすべての演奏が終了したのだった。
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会場はそのまま、ファン・イベントに参加する人たちが残ったままで、興奮に満ちたおしゃべりがいたるところで交わされていた。あわててサイン用にCDや写真集を買い求めた人たちもいた。メンバーが出てくるのを待つ間にステージ上ではクルーたちが機材の撤収作業を行っている。会場には、今回のイベント会場となったアストロホールへの謝辞とクルーの紹介と謝辞が流れ、クルーたちにも暖かい拍手が送られた。しばらくしてバンドが出てくるとさらに大いに拍手が沸いた。そして、順繰りにサインをもらい、握手をし、写真を撮り...、大勢の方がいらした反面、限られた時間のため、お一人・一組あたりのサイン・アイテムとお時間を1点、1分程度と制限させていただかざるを得なかったのは大変残念であった。しかし、それに快く応じて協力してくださった参加者の皆さんには心からの感謝の言葉と尊敬の念を送りたい。イベントは、それでも1時間半以上かかり、会場の閉店時間の関係もあり、終了となった時には、幸いなことに順番が回ってこなかった方は一人もいなかったようだ。
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...こうして、四日間に及んだVdGG発来日公演はすべて終了した。日本のファンの熱狂的かつ礼節あふれる態度には、もう何度も日本でライブを行ったことのあるピーターですら驚きかつ喜んでいた。彼らがいかに喜んでいたかを上手く伝える術を私は知らないが、メイン・エンジニアのエドが最後の食事の際に、感極まって主宰者やスタッフに篤い感謝の言葉を述べてくれたことはご報告しておいてもいいだろう。バンドにとってもクルーにとっても忘れがたい初来日公演となったことは間違いない。まだ、新作の計画はまだないとのことだったが、再び彼らの雄姿を日本で見たいものだ。ファンの一人として、ライブを見るために日本全国、また、遠くアメリカ、オーストラリア、カナダ、香港などから集まっていただいたすべての観客の皆さんに深く感謝いたします。本当にありがとうございました。
by BLOG Master 宮崎