VdGG 日本公演を振り返って 第三夜 |
at O-West, Shibuya, Tokyo. 29th Jun. 2008 (Sun.)
この日は日曜ということもあってスタート時間が早い。遠方から来た方が帰れるぎりぎりの時間設定だろう。
1. Lemmings
2. Lifetime
3. All That Beore
4. Sleepwalkers
5. Over the Hill
6. (We are) Not Here
7. Nutter Alert
8. La Rossa
9. Gog
10. Childlike Faith in the Childhood's End
(encore)
11. Man-Erg
メンバーがステージに登場してすぐに楽器の音を出すのはよくあることだが、今日は最初の音からして、あれっと思わせる、即興演奏だとわかるもので、ガイが最も早く音を出した。すぐにヒューが続く。もちろん、ピーターはまだ楽器に触ってもいない。譜面立てや何やかやをいじっている風を装ってから、ピアノではなく、ギターに手をかけた。即興で始まる曲はこれしかないが、一曲目?ということで確信が持てずにいたが、この瞬間に「Lemmings」だと確定したのだ。しかもその演奏のすさまじいこと。前日まで2回演奏を聴いているし、感動していたはずだが、今日の演奏は何かが違う。張り詰め方が飛びぬけているのだ。凄い予感がする。そしてエンディングでも、テンションを保ったまま終了。にこやかに振り向くピーターがかわいい。
『トライセクター』からだ、と紹介して「Lifetime」を始めた。もともと好きな曲なのだが、今日のは、初めて本当の意味で鳥肌が立った。この静かな曲でだ。なんということだろう。そしてもう一曲「All That Beore」。これも下手をするとミドルテンポのリフがルーズになるのだが、今日は、そこが強烈にズドっと響いてくる。こんなにヘヴィな曲だったか?という思いだ。
そしてピーターが次の曲をアナウンスすると客席から喜びのため息が出た。「Sleepwalkers」だ。初日の演奏がすばらしかっただけに、これをもう一度聴きたかったファンも多かったようだ。そしてその期待に見事にこたえてくれた。ピーターのチャチャもまた見れた。
そして「Over the Hill」。えっ、こんな早い段階でこの曲?私は正直驚いた。いったい今日はどんなセット構成なのだろうか。もはや、堂々たるメイン曲のひとつとなったこの曲はやはり感動的だ。最後の歌声が消えるまで、オルガンの余韻が消えるまで、誰一人として物音ひとつ立てたりしない。
次はもちろん「(We are) Not Here」だ。ぶった切るように、叩きつけるようにピアノを弾くピーター。うねる様に、飲み込むようにオルガンを弾くヒュー。流れを作り、かつ、断ち切るようにドラムスを叩くガイ。もはや神がかり状態だ。嵐のような拍手。
そしてピーターが狂ったよな叫び声を上げた。そうだ「Nutter Alert」だ。初日は叫び声なしだったが、やはりこの曲は叫んでくれたほうが嬉しい。よりへヴィでのたうつ感じの演奏だ。
それから、ヒューのオルガンがなり、即興風のイントロを加えながらもこれしかないという音だ。そうだ「La Rossa」だ。なかなか演奏されることが少ないこの曲を聴けるなんて、なんとラッキーなのだろうか。この曲のイントロで客席はどよめいた。歌が始まると声を伴わない歓声とため息が客席から一気に立ち上るのが目に見えるようだった。
観客の興奮が絶頂に達したように思われた中、次に演奏されたのは、雷鳴のごとくに轟きわたるオルガンのイントロで始まる「Gog」だった。これだ、これが聴きたかったのだ。3人の嵐のような、雷のような怒涛の演奏は、ひたすらすばらしかった。思わずガッツポーズで心の中で「ゴッドブラフ!」と叫んでいた。
もうこれ以上はないという感激をかみ締めるまもなく、「Childlike Faith in the Childhood's End」だ。初日を見た人が口々にその素晴らしさを称えたこの曲は二日目から見た人にとっては嬉しいプレゼントだったことだろう。初日以上に素晴らしい演奏となった。まさか、そんなことがありえるなんて考えもしなかったほどに。そしてピーターの絶叫でこの曲が締めくくられると、3人はステージ中央に出てきて手をかざし客席をぐるりと見渡していた。まったく信じられないほどの興奮で客席はスタンディング・オベーションとなっていた。
三人がステージを去っても拍手は鳴り止まず、やがてアンコールの手拍子へと変わった。そして、アンコール。「Man-Erg」だ。イントロのテイストを少し変えたピアノから狂乱の中間部へと。そして、再び整然とした歌のパートへと戻り、圧倒的な感動を与えながらこの曲もまた終わっていった。再び客席はスタンディング・オベーションでバンドへの感謝と尊敬の念を表した。三人も満足げに、にこやかに手を振ってステージを去っていったのだった。
こうして、奇跡のような第三夜目が終わった。誰もが口々に、この日のバンドは、まさに神がかりだったと言っていた。一分の隙もなく。神が降りてきた、という表現を使うファンもいた。
by BLOG Master 宮崎
全く同感です。
第3夜は最初から何かいつもとは違うと思わせる気配に満ち満ち
ていましたが、勢いに乗った後半部の怒涛のような演奏は圧巻で
格別でした。
バンドの演奏能力をも超絶した何ものかが顕現する瞬間を目撃し
たような感じです。大仰な言い回しを許して頂けるなら、音楽の
神が本当にいるのであれば、それはまさにあのような形で現れる
のではないかと思わざるを得ません。
いかなる録音や録画においてもそれを捉えることは出来ず、再生
することも不可能。ただその場限り、その場の空気を共有した者
のみが目の当たりにし体感し得る、まさに奇跡のような光景では
なかったかと思います。
が、互いに集中力を高めながら1つの極点に向かって縒り合わさ
って、遂には爆発的なエネルギーを獲得するに至る。それはもは
や音楽が音楽を超えてしまった瞬間であり、音楽の向こう側に突
き抜けてしまった瞬間であったと思うのです。かなり大袈裟な表
現をしていますが(笑)、いや実際、そうとしか言いようがない。
「神がかっていた」「何かが降りてきていた」という言い回しは、
あの場に居た人なら誰もが頷けるのではないでしょうか?そして
あのような途轍もない次元の演奏に到達し得た要素として、聞き
手である我々ファンの聴取姿勢もまた少なからず貢献していたの
だろうと思うと、そこに言い知れぬ感動を覚えてしまいます。
これだからライブは素晴らしいのです。
あれから10日近くが経とうというのに、"La Rossa"の熱狂の後、
"Gog"のイントロが会場に鳴り響いた瞬間を思い出すだけで、今
も鳥肌が立つような興奮を覚えます。