"Robot Woman" (1981) Mother Gong |
1. Disco At The End Of The World
2. Robot Woman
3. Machine Song
4. The Sea
5. Searching The Airwaves
6. Billli Bunker's Blues
7. Military Procession
8. Customs Man - Rapist
9. Fire
10. Red Alert
11. Stars
12. Australia
member
- Dane Cranenberg / bass
- Didier Malherbe / saxophones, flute
- Gilli Smyth / space whisper
- Guy Evans / drums
- Harry Williamson / guitars, vocals, keyboards
- Hugh Hopper / bass
- Yan Emeric Vagh / guitars
皆さん、あけましておめでとうございます。
さて、昨年最後の記事から、ガイ・エヴァンスつながりということで、年明け早々でマザー・ゴングで始めてみたいと思います。VdGGの音楽性からは意外に思われるかもしれないが、ガイ・エヴァンスの活動には面白いものがいくつかあります。先に紹介したVdGG以前の Misunderstood での『Golden Glass』のサイケ、ビート系の音楽性を踏まえた上でなら、このつながりも違和感なく聞けるかもしれません。先に紹介したサブテラニアンズも根っこは同じかもしれません。
ゴングといえば、デヴィッド・アレンに象徴されるヒッピー音楽的な側面が強く印象に残るものであり、ある意味能天気なくらい陽気な音楽だというイメージですが、マザー・ゴングは、そのゴングの支柱の一人であるシャクティ・ヨニことジリ・スマイスが、ゴング脱退後にデヴィッド・アレンから離れていた時期に結成したバンドで、活動停止期間もあるとは言え、長い歴史を持っているその音楽性もバンド発足時から現在までに変化もしています。ジリ本人の言葉を借りれば、ゴングの中の(「陰」と「陽」でいうところの)『陰』の部分を負っているジリによる音楽、ということになるでしょうか。
そのバンドの中心はもちろんジリですが、それをサポートする中心的なメンバーとしてハリー・ウイリアムソンがいます。音楽的な面での中心的な役割はハリーの方が握っているともいえるでしょう。そこにディディエ・マレエブ(ブルームディド・バド・デ・グラス)を加えた3人を核として、ゲストや若手が加わるという形で活動をスタートしたようです。ガイ・エヴァンスの参加していた時期は本作、及び、次作の2枚のスタジオ・アルバムだけですが、最近になって、この時期のライブを収録した初期ライブ・コンピレーション「グラストンベリー・フェスティヴァル 1979-1981」という作品が発表され、1981年のガイ参加のライブ演奏を聴くことが出来ますし、ベスト盤にも先の2枚のスタジオ作品からの収録があります。
さて、本作は、ジリ・スマイスを頂点としたもう一つのゴングとでも言うべきマザー・ゴングの2作目。ここで聞くことの出来る音楽はまさにゴングそのものと言っていいでしょう。私が持っているのはリリースされた当時に購入したLPなのですが、当時はデヴィッド・アレンの声ではない歌声に感じた違和感の方が先に立ってしまい、いまひとつのめり込めなかったのですが、時間を置いた今ではこのアルバムの素晴らしさがよく分かります。ガイのドラミングもまったく違和感がありません。
1曲目はタイトルから連想できるようにシンプルなディスコ・ビートで始まるダンス・ミュージック。いかにもゴングなメロディが耳に残ります。そこから一気にゴング・ワールドへと突入していくのですが、印象としては80年代前半のトレンドも取り込みながらも70年代を強く感じさせる音作りであり、「マジック・ブラザー」や「フライング・ティーポット」にも通じるような印象です。祝祭的な猥雑さと明るさを持ち、楽天的と言えるほど前向きな音楽です。
デヴィッド・アレンがいないことで、また、ボーカルのスタイルが多少アレンを意識したもののようにも聞こえることもあり、このアルバムはゴングのメンバーによるセルフカヴァーのようなものでオリジナリティは低い、という意見もあるかもしれませんが、元々ゴングの中でジリの作曲面での貢献を考えると、ジリもまたバンドの音楽性に大きな影響を与えていたことは間違いないでしょうし、このアルバムの音楽性はジリの音楽性そのものだと言えるでしょう。いずれにせよ、発表から20年以上経ってしまった今あらためて聴きなおしてみると、隠れた佳作だと言って良いと思います。
by BLOG Master 宮崎