PH関連作品紹介 8 "Exiles" David Cross |
1. Exiles
*2. Tonk
3. Slippy Slide
4. Cakes
5. This Is Your Life
6. Fast
*7. Troppo
8. Here
この3年間、毎年来日してくれているデヴィッド・クロスの1997年ソロ作品であり、久々にロバート・フリップやジョン・ウェットンとの共演を含むヒット作であり、それまでの作品よりも幾分親しみやすい楽曲が揃っている点でも快作である。1曲目はアルバム・タイトルにもなっているクリムゾンのヒット曲。ずいぶんとモダンなアレンジだがリズムが好みと合うかで評価が分かれているようだ。もちろんジョンが歌っているのだが、昨年の日本公演でのライブ演奏も素晴らしかった。
2曲目にピーターが登場するわけだが、曲の印象は、思いのほか「エクスポージャー」での「ディスエンゲイジ」に共通する雰囲気だ。バックのコード・カッティングはピーター・クラリッジというバンドのメンバーだが、ロバートよりも若干リズムの刻みがジャストで、よりハード・ロック的な印象が強い。しかし、ソロを取るのはロバート・フリップである。ドラムスのノリがジャズ・ロック的な精緻なものであることも手伝って、なかなかの素晴らしい曲に仕上がっている。
バンドのみによる複合拍子を多用したかっこいい3曲目をはさんで、4曲目ではデヴィッドとロバートによる静かに重く流れるデュオ演奏。これもまたクリムゾンの「トリオ」を意識したものなのかは定かではない。5曲目ではジョン・ウェットンが再び登場し歌っている。作詞はピート・シンフィールドだ。再びバンドだけによる6曲目を挟みピーターの二度目の登場である。
ピーターによるコーラスとスピード感のあるイントロに導かれてタイトなジャズ・ロックが始まる。途中のブレイクなど、ちょっとダサイかな?的なアレンジでもあるのだが、そのすぐ後にロバートのスリリングなギター・ソロが入ってきたりするものだからたまらない。そういったのも含めて愛すべき1曲となっている。こうして聴いてみるとピーターの歌は、PFMの曲でもそうだったが、こういったジャズ・ロック的な楽曲にも大変よくマッチするのだなと思ってしまう。結果、私はこの曲が大好きになってしまっている。
最後はバンドのみによる楽曲でアルバム中最長の11分近いの大曲。これもまた硬質でヘヴィな楽曲であり、デヴィッド・クロスという人の持っている嗜好性をよく表しているといえるだろう。来日公演でのギタリスト、ポール・クラークはよりハードロック的な素養の強い演奏スタイルであったが、このアルバムではむしろクリムゾン的なピーター・クラリッジのプレイの方が支配的なのかもしれないと感じたが、果たしてどちらの演奏がよりフィーチャされているのだろうか。
本作にはジャケット違いの日本盤がある。オリジナルはアジア人女性の写真だが、日本では受けないと判断されたのだろうか、より幻想的でアルバムの雰囲気を少しでも日本人に向いた形で表現したような絵が用いられている。好みに応じて選ぶことが可能だ。なお、アルバムのクレジットにはフィル・マンザネラやピート・シンフィールドなどの演奏では参加していないアーティストに対しても「FRICTION, SPARK, LUBRICATION, DESIGN & SHADING」における参画について謝辞が記されており、その中にピーター・ハミルやロバート・フリップとならんでガイ・エヴァンスの名前がある。いつかこの二人の共演も実現すると面白いかもしれないと、ふと思った。
by BLOG Master 宮崎