“Patience” Albums which includes the Songs Peter Played in Japan 12 |
“Patience” (1983)
1. Labour of Love
2. Film Noir
3. Just Good Freinds
4. Jeunesse Doree
5. Traintime
6. Now More than Ever
7. Comfortable?
8. Patient
これもまた、アルバム収録曲全8曲のうち5曲が日本でソロ・パフォーマンスを披露してくれている豊作アルバムです。
まずは「Labour of Love」です。ご覧のようにピーターが使っているのはイギリス英語の綴りで、アメリカ英語だと「Labor of Love」となります。ピーターはイギリス人なので当然イギリス英語が使われているのですが、日本のパソコンなどに入っている英単語のスペル・チェッカーはアメリカ英語を基本としているものが多く、いつもこの曲名が綴り間違いだとエラー・メッセージが出てしまいます。ピーターの書く歌詞を読むうえで、些少なことですが気を付けておきたいところです。
曲は、イントロのピアノのフレーズが印象的ですが、繰り返し出てくるこのモチーフの軽妙洒脱さと、展開部の低音を軸とした力強いフレーズ、さらにはラスト近くのピアノの低音を一つ一つ長く伸ばしていくダークなバックに重なる囁くような歌などなど、1曲の中での対比が大きく、ゆったりとしたテンポながらダイナミックな曲です。
「Just Good Friends」は、ピーターの手書きセットリストではよく「JGF」と書かれています。2曲目、3曲目として演奏されることも多く、ある意味その日の公演の勢いづけという立ち位置の曲なのかもしれません。この曲もどちらかというと低めの音を中心としたピアノが印象的なフレーズを繰り返しています。ライブ・アルバム「Typical」にも1992年の演奏が収録されているので比較してみるのもいいかもしれません。
「Traintime」については、先に出てきたときに少し書きましたので、あまり書くことはありませんが、スタジオ盤でのこの曲は、非常に早いテンポで疾駆する列車というイメージです。その分、重みという点ではライブに一歩及ばないかもしれません。ただ、ここで聴けるガイ・エヴァンスのスタッカートの効いたスネア・ドラムはボレロ的でもあり、マーチング・ドラムのようでもあり、独特の雰囲気をこの曲に与えています。最後の「let there be light!」という叫びは、「光あれ!」という旧約聖書の言葉を直接的に連想させます。
昨年の、札幌での初日公演でのギターセットの1曲目だった「Comfortable?」もこのアルバムからです。スタジオ盤はいかにもバンド編成の醍醐味をこれでもかとばかりに詰め込んだような迫力とスピード感があり、ブレイクを多用した鋭い切れ味の一曲です。アップ・ストロークとダウン・ストロークが交互に力を込めて繰り返されるスタイルはシンプルなだけにその分強烈に歌のメロディを浮かび上がらせます。
アルバム最後を飾るのは、暗くうごめくEボウでのギターから始まる「Patient」です。ライブではアコースティック・ギターのアルペジオだけで再現するのですが、ブレイクの取り方や、強弱の付け方で、バンド・バージョンとはまた違った魅力を見せてくれます。ある意味、こういうバンドスタイルで発表された楽曲のソロでのライブは、その楽曲の骨格というか、ぎりぎりまで装飾をそぎ落とした剥き出しの姿を見せてくれていると言うこともできるでしょう。
ここであげた5曲すべてが二ケタの演奏回数を誇るという超定番アルバムです。このアルバムはやはり必聴盤です。
by BLOG Master 宮崎
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