ニック・ポッターの実姉による追悼文@ガーディアン紙 |
Nic Potter obituary by Sally Potter
(guardian.co.uk, Tuesday 22 January 2013 17.15 GMT Series: Other lives)
Bass guitarist Nic Potter supported Chuck Berry and was a session musician with the Beach Boys
私の弟、ミュージシャンで作曲家であるニック・ポッターが、肺炎のため61歳で亡くなりました。彼はロック・グループ、ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターのメンバーとして最もよく知られていました。ベース・ギタリストとして、彼は、彼が一緒に仕事をしたフロントラインのミュージシャンたち、例えばピーター・ハミルやダンカン・ブラウンのような人たちに、独創的なハーモニーとリズムを、素早く、かつ直感的に、分け与えていました。懐の広いコラボレーターであった彼は、静かなる情熱を以て精巧なリフを提供していたのです。
ニックは、ウィルトシャーのベルテーン・スクールのグランドにあった元陸軍の一時待避所で生まれました。そこ(ベルテーン・スクール)は、私たちの父ノーマン・ポッターが木工を教えていた所でした。彼は感受性豊かな男の子で、2歳の時に鶏が殺されるところを見て、一生決して肉を食べないと言ったことがあります。彼は決して肉を食べませんでした。彼が、他人の苦しみを思いやっていたことは常に明らかでした。
彼は耳で覚えた独学のミュージシャンでした。私の忘れられないニックの思い出の一つは、彼が、ベッドルームで、彼の周りにある、他の誰にも聴こえない音楽の世界に取りつかれたかのように、何時間も延々とアンプに繋いでいないベースを弾いているイメージです。
彼の、ロック・ミュージシャンとしての初期の何年かは - 16歳の時にザ・ミスアンダストゥッドで演奏し、18歳の時にはロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートでチャック・ベリーをサポートしました - 彼が生涯旅を愛するようになったきっかけとなった、世界をツアーするたびに冒険の詰まったワクワクするようなものでした。ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターとは2枚のアルバムを録音し「ザ・リースト・ウィ・キャン・ドゥ・イズ・ウェイブ・トゥ・イーチ・アザー」と「H to He、フー・アム・ジ・オンリー・ワン」(ともに1970年です)、イギリス、ヨーロッパ、スカンジナビア、アメリカと南米をツアーして回りました。
ザ・タイガースに加入しアメリカをツアーして以降は、セッション・ミュージシャンとして、ビーチ・ボーイズやジェフ・ベックと働きました。その後、彼自身の作曲に集中するようになったのです。彼のレーベル、ゾマートは、11枚のアルバムを生み出しました。その中には、「ザ・ブルー・ゾーン」「ニュー・ヨーロッパ」そして「ザ・ロング・ハロー・ヴォリューム2」が含まれています。ニックはしばしば彼の偉大な友人である、ヴァン・ダー・グラーフ・ジェネレーターのドラマーであるガイ・エヴァンスとコラボレーションを行いました。
ニックは、美しい細密画を描き、彼の限定盤CDのための手描きカバーなどを手がけました。
2年前、ニックはピック病だと診断されましたが、増していく障害にもかかわらず、快活になり、彼の優しさ、皮肉っぽい機知や、自身の友人たちに対する優しさと家族と生きとし生けるあらゆるものへの感謝が、彼と一緒にいることを楽しくしていました。昨年、私たちは彼のお気に入りだった二つの島を訪れました。私たちの妹、シャーロッテと私の夫クリストファーと一緒にです。ニックは、シシリー島にあるセント・アグネスの唸る風の中で小さなテントでキャンプすることや、ギリシアのイドラの埠頭辺りを歩き回ることなどを楽しみました。
彼は、私とシャーロッテの中に、また、彼の叔父のニコラスの中に生きています。
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ニックにお姉さんと妹さんがいたとは知りませんでした。ニックの本名はニコラス・ポッターで、同じ名前のおじさんがいたというのも初めて知りました。それにニックは菜食主義者だったんですね。ニックと交流のあった知人は、一度ニックから何かの球根が送られてきたと言っていましたが、ニックが花を愛でていたというのも分かる気がします。改めて彼が偉大なミュージシャンであったと同時に愛すべき人であったことを思わずにはいられません。
追記:ニックのお姉さん、サリー・ポッターは、有名な映画監督のサリー・ポッターその人だということが分かりました。長編の代表作は以下の通り。詳しくはwikipediaや映画関係のサイトでお調べください。
・オルランド Orlando (1992)
・タンゴ・レッスン The Tango Lesson (1997)
・耳に残るは君の歌声 The Man Who Cried (2002)
・愛をつづる詩 Yes (2004)
・Rage (2009)
・Ginger & Rosa(2012)
なお、wikipediaによると、漢書は、ヘンリー・カウのリンジー・クーパー(「Oh Moscow」)やフレッド・フリスト(「Yes」や「Rage」のサントラ)とも音楽での共同作業しています。
by BLOG Master 宮崎