Project Brain #4; Peter Blgvad "Knights Like This" (1985) |
1. Special Delivery (4:05)
2. Face Off (3:36)
3. Let Him Go (4:13)
4. The Incinerator (4:59)
5. Pretty U Ugly I (4:29)
6. Always Be New To Me (3:47)
7. Last Man (4:15)
8. Meet The Rain (5:47)
9. The Wooden Pyjamas (4:56)
10. Marlene (4:50)
ガイ・エヴァンスの参加作品をご紹介するプロジェクト・ブレイン第4弾は、スラップ・ハッピーのピーター・ブレグヴァドの2枚目のソロ・アルバム「ナイツ・ライク・ディス(このような騎士ども)」です。「この」が指し示すのはジャケットに描かれている場面のことでしょう。
ガイとの接点がどこにあったのか、およそ見当もつかない組み合わせですが、クレジットを見てみると、もしかしたら、という想像が可能です。まずはレコーディング関連クレジットを見てみましょう。
- Recorded & Mixed at Crescent Studios
- Engineed by David Lord and Glenn Tommey
- Mixed by Warne Livesey
- Produced by David Lord
- Music & Words by Peter Blegvad excerpt 5,6
5 by Kristoffer Blegvad, 6 by John Greaves & Peter Blegvad
- Arranged By David Lord
- Artwork By Peter Blegvad
そうです、録音はピーター・ハミルとデヴィッド・ロードの共同所有だったバースのクレセント・スタジオで、エンジニアリングとプロデュース、それにキーボードの演奏でもデヴィッド・ロードの名前を見ることができます。ということは、デヴィッド・ロードが鍵でしょうか。
次にこのアルバムの録音のために集まったミュージシャンの顔ぶれを見てみましょう。
- Peter Blegvad: Vocal(All), Acoustic Guitar (4,10),
Backing Vocals(4,6,8-10), Electric Guitar (1-3,7-9), Synthesizer (9)
- Kristoffer Blegvad: Backing Vocals(1-4, 6-10), Electric Guitar (1,4,5,10)
- Keith Wilkinson: Bass (1-5,7,9,10)
- Guy Evans: Drums(1-4,7,9,10), Percussion (5)
- John Greaves: Bass (6), Keyboards (8)
- Manny Elias: Drums (5), Percussion (6)
- Glenn Tillbrook: Electric Guitar (3-6),
- Jakko Jakszyk: Electric Guitar (1,2,5-8)
- David Lord: Keyboards (1,2,4-8,10), Synthesizer (9)
- Phil Harrison: Keyboards (3-8,10)
- David Lord: Percussion (1,6,8,10),
- Glenn Tommey: Percussion (8)
- Gary Barnacle: Saxophone (3,4)
- Stuart Gordon: Strings (4,5)
こうしてみるとピーター・ブレグヴァドの弟クリストファーを初めとして、以前からの繋がりがあるジョン・グリーヴス、ジャッコ(1枚目「裸のシェークスピア」の時点でデイブ・スチュワートを介しての知己)を除くと、ほとんどがデヴィッド・ロードの招集に応じたメンツではないかと思われます。
1970年代末にピーター・ゲイブリエルの「Ⅳ(Security)」を録音、共同プロデュースしたことで一気に知名度の上がったデヴィッド・ロードですが、彼は本来、クラシック系の録音と同時にニュー・ウェイブ系のバンドの録音・プロデュースに定評がある人物です。
スクイーズのグレン・ティルブルックとキース・ウィルキンソン。コーギス繋がりのフィル・ハリソンとスチュアート・ゴードン。それに当時はバースに住んでいた元ティアーズ・フォー・フィアーズのマニー・エライアス。グレン・トミーもコーギスやピーター・ゲイブリエルの「Ⅳ」へ参加していますからデヴィッド・ロードの仕事には欠かせない人脈の一人なのかもしれません。
ゲイリー・バーナクルは、パンクからジャズ、ポップス、ニュー・ウェイブまで幅広い活動で知られるセッション・ミュージシャンです。この時点ではまだジャッコとの共演(Level 42、ジャッコは1991年にアラン・ホールズワースの後任として加入)はしていないと思いますので、やはり何かしらのバンドの録音でデヴィッド・ロードと知り合ったと思われます。
そういったことを踏まえて見ても、ガイ・エヴァンス。ガイの活動の拠点はコーンウォール。クレセント・スタジオの常連たちはバース近郊の住人。そして、このアルバムに見られるデヴィッド・ロードによるニュー・ウェーブ色の強いアレンジ、音色などのプロダクションを考えると、簡単に思いつく人選ではないように思えますので、私としては、ジャッコの強いリクエストがあったのではないか、と勝手に想像しています。ちなみに、アンディ・パートリッジがプロデュースしたデビュー・アルバムでは、のちにザ・ロッジ(The Lodge)でもピーター・ブレグヴァドと組むことになるアントン・フィアがドラムスを叩いていたので必ずしも他に選択肢がなかったわけではないと思います。カンタベリー、キング・クリムゾン、そしてVdGGが大好きな音楽少年だったジャッコにとって、このクレセント・スタジオでの録音という好機を活かすことで「The Long Hello volume Three」では実現しなかったガイ・エヴァンスとの共演を果たしたのではないかと見ています。
アルバムは、ピーター・ブレグヴァドのアルバムの中でも1,2を争う派手な仕上がりです。もしかしたら、ヒット・チャートを狙ったのではないかと思えるほどです。それがデヴィッド・ロードのアレンジとプロデュースの結果なのか、ピーター・ブレグヴァド自身の目指した方向性だったのかはよく分かりません。楽曲は、ライブでも繰り返し演奏されることとなる曲や、後にセルフ・リメイクした曲が複数含まれており、とてもいい作品だと思います。当時のニュー・ウェイブでよく見られた高音が強調されたフランジングたっぷりのギターやきらびやかなシンセ、派手目のイコライジングとエコー処理の施されたドラムスなどが大丈夫であれば...。
ちなみにこのアルバムからは、1曲目の「Special Delivery」がシングルカットされ、7インチと12インチが発売されています。また、「Pretty U Ugly I」もシングルとして発売されていますが、カップリング曲が1枚目からであることなどからアルバムの制作以前に録音されたのではないかと思われます。なので、この曲だけドラムスがマニー・エライアスなのかもしれません。アルバムに収録するにあたってガイのパーカッションが(あまりはっきりとは聞こえませんが)オーバーダビングされているのかも。
それにしても、「Meet The Rain」はいい曲だなぁ。
by BLOG Master 宮崎
ちなみに、このアルバム、1985年にVirginから発表されて以来、一度も再発されていません。そのためCDは見つけづらくなっています。LPの方が見つけやすいでしょう。